【根尖病巣】歯の根っこに膿が溜まる原因や症状・治療法とは?
スタッフブログ
みなさんは「歯根嚢胞(根尖病巣)」という病気をご存知ですか?
歯の根に膿が溜まって、違和感が生じる病気のことです。
自覚症状がなく、たまたまレントゲンを撮影した際に発覚する場合もあります。
あまり聞いたことがない症状に、驚いている方もいらっしゃるかもしれませんね。
口腔内に膿が溜まるのは、一体なぜでしょうか?
「膿が出る=身体のどこかに異常が生じている」ということは間違いなさそうです。
本記事では具体的な原因や症状、適切な治療法などについて解説します。
ご自身にも起こりうることとして、ぜひご覧ください。
膿が溜まるのはなぜ?
歯根嚢胞が生じる原因の多くは、細菌感染によるものです。
そもそも、細菌が歯の根へ侵入するのはなぜでしょうか。
考えられる理由は次の3つです。
1.重度のむし歯
最も多いのが、この理由です。
むし歯は放っておいても自然治癒することがなく、徐々に症状が進行します。細菌が内部にまで到達して神経が感染すると、眠れないほどの激痛に襲われてしまうでしょう。ここでも我慢していると、やがて神経が死んで痛みが消失します。
中にはこの段階で、むし歯が治ったと勘違いする方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし実際は、細菌が歯の根を蝕んで炎症を引き起こしています。神経が死ぬと痛みを感じなくなるため、事態の深刻さになかなか気付けないのです。
2.不十分な処置
何らかの理由で神経が死ぬと、抜髄をしなければなりません。これは比較的難しい処置であり、経験と実績が豊富な医師であっても成功率が80%程度とされる治療です。
というのも、人間の歯の根は複雑な構造をしており、確実に菌を取り除くことが難しいのです。
菌が残ってしまうと、細菌の動きが再度活発化して歯の根へ入り込みます。
何度も通院を重ね「やっと治療が終わった」と思った矢先、まさか見えないところでこのような事態になっているとは思いませんよね。
3.歯の破折
抜髄をした歯は非常に脆くなり、ちょっとした衝撃で破折しやすくなります。激しいスポーツで、ぶつかった拍子に折れることもあるでしょう。破折した部分から、細菌が侵入して歯の根を蝕むことがあります。
また歯に「中心結節」という突起がある方は、この部分が折れたときも細菌が内部へ侵入します。これは歯の根が完成していない、小学生や中学生で起こるケースもあるため注意が必要です。
主な症状
代表的な症状は、次の6つです。
1つずつ詳しく解説します。
1.フィステルができる
歯茎にできた、白っぽいできものを「フィステル」といいます。いわゆる「膿が入った袋」で、ニキビや口内炎のような見た目をしているのが特徴です。
歯根嚢胞は袋状になっており、中の膿が増えると徐々に大きくなります。
口腔内にできものがあると気になる方もいるはずですが、ご自身でつぶさないよう注意してください。クリニックで適切な処置を受けることが大切です。
2.歯茎が腫れる
免疫力の低下によって、歯茎が突然腫れて痛むことがあります。風邪などの体調不良や、疲労・ストレスが蓄積しているときは特に注意が必要です。
重度の場合は口を開けにくくなったり、顔の外見が変わったりするので早めに受診してください。
3.噛むと痛みが出る
歯根嚢胞ができた歯で噛むと、歯根膜が炎症を起こして痛みが出やすくなります。
噛んだときに異常が出るのは、歯根膜が、噛んだものの硬さを判断する器官であるためです。
4.歯が浮く
症状が進行して膿の袋が肥大化すると、歯槽骨を溶かすようになります。その結果歯が浮いたり、グラグラしたりと違和感が生じるようになるでしょう。
5.副鼻腔炎になる
歯根嚢胞が上の歯にできると、副鼻腔炎を引き起こす可能性があります。
上顎は歯の根が副鼻腔に近いため、鼻にも細菌が入り込むのです。
鼻詰まり、頭痛や顔面痛といった症状にお悩みで、なかなか治らない方は歯根嚢胞が関係しているかもしれません。進行するにつれて口臭もひどくなるので、早めの対処が必要です。
耳鼻咽喉科へ行っても副鼻腔炎がなかなか治癒しない方は、一度歯科医院を受診してみてください。
6.骨髄炎
下顎に歯根嚢胞ができると、骨髄炎になるリスクが高まります。
特に風邪や疲労で免疫力が低下しているときや、膿の袋が大きくなりすぎた場合は要注意です。
入院が必要となり、長期的な治療となります。
治療法
ここからは、歯科医院で受けられる治療を紹介します。
自覚がないケースもありますが、紹介した症状に心当たりがある方は早めに歯科医院を受診してください。
悪化する前に適切な処置を受けることが大切です。
1.根管治療
死んだ神経を除去(抜髄)し、管をキレイに洗浄・消毒してフタをする治療です。
同じ歯が何度も細菌感染を起こしている場合は、治療の方法に問題があるかもしれません。根管治療を専門とするクリニックを探し、相談してみることをおすすめします。
2.歯根端切除術
上記で改善できない場合に行うのが、歯根端切除術です。比較的骨が薄い、前歯や上顎に用いられます。
歯茎を切開して歯根嚢胞を取り出し、歯の根の端を切除してフタをするという外科的処置です。
3.歯の再植術
骨に厚みがある、下の奥歯などには歯根端切除術を適用できません。歯根嚢胞が見られる歯を一度抜いて病巣を取り除いたあと、再植して戻します。
異常を感じたときは早めの受診を!
口腔トラブルには、自然治癒するものとしないものとがあります。例えばごく初期のむし歯であれば、口内環境を改善することで自然に治るケースもあるでしょう。
歯根嚢胞を含め、それ以外のトラブルは基本的に自然治癒しません。放置しても、症状は悪化するばかりです。
歯根嚢胞を放っておくと膿の袋がどんどん肥大化し、歯槽骨を溶かして全身へ細菌が巡ります。
自覚症状のないケースが多いので、3~4ヶ月ごとに定期検診を受けて口の中をチェックしてもらいましょう。仕事や家事が忙しい方も、半年に一度はぜひ受診してください。
「費用がかかるのがイヤだ」
「時々でも歯科医院へ足を運ぶのが面倒」
という方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、病気の発見が遅れて何度も通院する姿をイメージしてみてください。
その方が、通院期間や費用がかかってしまうはずです。
いかに口腔トラブルを予防し、早期発見・治療するかということが大切なポイントですよ。